弊社では創業当初から色んな光学部品を製作して参りましたが、実際にその部品がどのような用途で使われているのか、はっきりとは分からない事が多いです。
企業のお客様ばかりですので、企業秘密の関係上、こちらからお聞きするわけにも行かず、ちょっとした打ち合せの時などに小耳に挟む、と言う程度です。
個人のお客様の場合、用途をお伝え頂いた方が、製品に要求される精度や品質がある程度分かりますので、最初のお問い合せの時点で、お伝えできる範囲でご連絡をお願いしております。
今回のお客様は、個人で中判カメラをお持ちで、焦点を合わせる為に幾つかのアダプターが必要、と言うのが最初のお問い合せでした。
中判カメラというお話しでしたが、勉強不足で、名前程度は聞いたことがありますが、どのような物かは、はっきりとは分かりませんでした。
ただ、ネジとネジの合わせですので、現物があれば、ほとんどのネジは加工出来ます、という回答をさせて頂き、その後も打ち合せをさせて頂きました。
中判カメラ自体、一般的ではありませんが、国産では無いと言うことで、実際に合うネジが市販されておらず、しかも焦点を合わせる為にレンズを移動させなくてはならず、簡単な依頼内容では無い、と言うのが最初の印象でした。
ところが弊社の技術に聞いたところ、レンズの移動が簡単にできそうな、ヘリコイド単体の製品が販売されていることを知り、お客様にその製品を紹介したところ、サイズが丁度良さそうなので、早速購入する、ということでした。
ただ、さすがにこのヘリコイドがそのまま中判レンズに付く訳では無いので、今度はそのヘリコイドと中判レンズを繋ぐ為のアダプターを製作する、と言うことになりました。
写真左上がヘリコイドで、右上が中判カメラのレンズ、そして中央が今回製作した部品です。
単に両者を繋ぐネジを作れば良いと言うわけでは無く、ヘリコイド、中判カメラ、それぞれの3Dオブジェクトを作成し、アダプターと合わせてみて、コンピュータ上で簡単な組み立てシミュレーションを行ってから実際の製作に入りました。
もちろん問題なく使用できた、とお客様からもご報告を頂いており、今回記事にさせて頂きました。
ちなみにヘリコイドとは、私たちの業界では多条ネジの事を指し、通常のネジよりも少ない回転で伸縮することができ、カメラのズームレンズなどによく使用されているものです。
弊社でも多条ネジを切ることは出来ますが、通常のネジに比べて格段にコストが掛かるので、市販のヘリコイドを使用する方が良いでしょう。
弊社では今回のような市販部品をお客様にご紹介したり、弊社で購入して、弊社の製品と組み合わせたり、出来るだけコストが安くなるよう、工夫しております。